Vol.03 , What would you like to convey through flowers?
「花が好き」は、スタートラインでしかない。でも、最初はそれで十分だ。
この仕事を続けるということについて
誤解してほしくないので、最初に言っておく。「花が好き」なだけじゃダメだ、という話をしようとしているわけじゃない。むしろ逆で、「花が好き」はちゃんとしたスタートラインだと思っている。ただ、スタートラインはゴールじゃない。それだけの話だ。
LUVONICALを立ち上げて、たくさんのフローリストたちと仕事をしてきた。途中で辞めていった人もいるし、今もずっと続けている人もいる。その差を、私なりに外側から見てきた。
結論を先に言うと、続けている人たちは全員、「好き」の先に「届けたい」を持っていた。
仕事になった瞬間、「好き」だけでは足りなくなる
趣味として花を楽しむのと、仕事として花を扱うのは、似ているようで全然違う。一番の違いは「相手がいる」ということだ。
自分のために作る花は、自分が気に入ればそれでいい。でも、仕事の花には必ず、誰かの文脈がある。結婚式の新郎新婦の想い。ブランド展示のディレクターのビジョン。商業空間のオーナーの「この場所で実現したいこと」。
その文脈を読んで、自分の表現を重ねる。それが、仕事としての花だ。
最初のうちは、自分の好みと相手の要望がぶつかることもあるだろう。「自分はこっちの方が美しいと思うのに」と感じることもある。それはむしろ健全なことで、そのぶつかり合いの中から、少しずつ「自分の表現の輪郭」が見えてくる。LUVONICALのフローリストたちも、みんなそうやって今の表現を作ってきた。
感覚と言語化、両方がいる
LUVONICALのフローリストたちを見ていて思うのは、長く活躍する人ほど「言語化がうまい」ということだ。
これは、饒舌だということではない。「なぜ自分はこの花を選んだのか」「なぜこの構成にしたのか」を、自分の言葉で説明できるということだ。
感覚だけで仕事をしていると、うまくいったときも、うまくいかなかったときも、理由がわからないのだ。それでは再現ができない。次の仕事に活かせない。そして何より、クライアントに伝わらない。
感覚は才能かもしれない。でも、言語化は技術だ。技術は学べる。それがこのアカデミーで私たちが最も大切にしていることの一つでもある。
「好き」が、いつか武器になる瞬間
花が好きだという気持ちは、実は仕事において大きな武器になる。好きなものに対して人間は、驚くほど粘り強くなれるからだ。
知識を深めることも苦じゃない。素材に対して細かくなれる。季節の変化に敏感でいられる。クライアントの要望に「それは難しい」と言う前に、まず「どうすればできるか」を、難しさよりも楽しさに変換して考えられる。
そういう姿勢が、長い目で見ると「信頼」になる。そして信頼が指名になる。「花で、際立て。」というコンセプトは、そういう積み重ねの先にある状態を指している。
「好きだから」で始めていい。でも、「好きだから」だけで終わらないこと。その先にある「届けたい」という気持ちを、少しずつ育てていくこと。それが、フローリストとしての仕事を長く続けるための、一番シンプルな答えだと個人的には思っている。
あなたは花で何を届けたいですか
LUVONICALの採用で応募してくれた方に、私がよく聞く質問がある。「花で届けたいのは、どんなことですか?」というものだ。
最初は「うーん」と考え込む人が多い。それでいいと思っている。すぐに答えが出なくていい。でも、その問いを持ったまま現場に出ていくことで、少しずつ答えが見えてくるはず。
花が好きで、誰かに何かを届けたいと思っている。それだけで、スタートラインには立てる。難しく考えなくていい。ただ、その気持ちを大事にしながら進んでほしい。
「好き」は、十分なスタートだ。